ランドリーバスケットとプラカゴの強度

折りカラー編みのランドリーバスケットです。しばらく前に作ったものですが、使ってみると結構丈夫だったので、もうひとつ作りました。

ランドリーバスケット
ランドリーバスケット

サイズは、約35cm×22cm×28cmです。

試しに、2Lのペットボトルを4本、順に入れてみました。さすがに入れているときは少し形が歪みますが、空にすればじきに戻ります。重さで歪んだというより、作り方の下手さによる歪みの方が大きいかもしれません。

そして、ここまで見てきたステッチです。

これまでは「装飾」としてのみ見てきましたが、文献において最初に現れたステッチは、「補強」のためのものでした。薄いPPバンドですから、大きな面になると撓みやすく、外圧にも弱い。そこで、後差しでバンドを重ねることで強度をつけたのです。

その後、装飾がメインになったとしても、バンドを重ねることで強度が増すという効果は当然ありますし、強度を目的としたステッチもあります。
「二重クロス模様」で引用した「ランドリーバスケット」が、その例でしょう。

ステッチの試作では、あまり大きなカゴは作っていませんので、実物同士を比較することはできません。そこで、バンドの重なりを数えて、密度を比べてみました。

編み方バンドの重なり重なり数
折りカラー編み2重の地+1+14
レベル1・縦横(1/2幅)2重の地+(1/2)+(1/2)3
レベル2・クロス(1/2幅+1/4幅)2重の地+(1/2)+(1/4)*√22.85
レベル2・クロス(1/2幅+1/3幅)2重の地+(1/2)+(1/3)*√22.97
二重クロス(1/2幅+1/4幅)2重の地+2*((1/2)+(1/4)*√2)3.71
二重クロス(1/2幅+1/3幅)2重の地+2*((1/2)+(1/3)*√2)3.94

もちろん、密度=強度というわけではありません。

それでも、強度の一つの目安として見るなら、レベル1・縦横の方が、レベル2・クロスより丈夫そうです。

ところが、実際に多く作られているのはレベル2・クロス。
そう考えると、ステッチは「強度」よりも「装飾」を優先して発展してきたことが、普及状況にも表れている、といえるでしょう。

補強のためのステッチなら、すべてのスロットを埋め尽くします。しかし、装飾としてのステッチを突き詰めるなら、むしろ「どこを間引くか」「どう余白を取るか」という引き算こそがデザインになります。

先に「多くの差し位置の中から必要な箇所を選ぶ」「レベル3はデザインのための自由度」と書きましたが、単位の応用は敷き詰めることだけではないのです。「あの模様」のように。

では、二重クロスで、可能なスロットに最大幅のバンドを差せるだけ差したらどうなるでしょう。

計算上は、ほぼこのランドリーバスケットくらいの密度になります。
実際の強度も、それくらいになるのでしょうか。
……そんな単純なものではなさそうですけど。

この作品の構造データ(square45形式)です。本数・サイズ・色・バンドの並びなどは以下のXMLをご利用ください。

付記:
持ち手を可動にするため、本体にはDカン、四本丸編みの持ち手の両端にナスカンをつけました。

この持ち手の作り方については、「あらうだえ手芸フォーラム」で相談して、アイデアをいただいたものです。作る人同士を繋ぐ場所。編み手の皆さん是非のぞいてみてください。.cbmeshフォーマットも添付可能とのことです。

PPバンド・ダマスクと丸花模様のかごバッグ

最近の流行柄を作ってみました。

皆さん作られてますよって感じで、画像の共有や検索、ハンドメイドのサイトなどでよく見かけます。もちろん、コピーではなくサイズや位相はそれぞれに異なるのですが、同じ構成です。

もし、オリジナルを作ったのはどなたか、出典が何か、ご存じの方があれば是非、教えて下さい。

ダマスクと丸花模様のかごバッグ
Damask Pattern and Rosette Pattern
ダマスクと丸花模様のかごバッグ

側面水平方向の13段を、3段-7段-3段で切り替えています。内側を見るとわかるように、ともにギンガムチェックなのですが、編みひもの色を変えることで、ギンガムの1点が入れ替わっています。

ダマスクと丸花模様のかごバッグの内側
ダマスクと丸花模様のかごバッグの内側
ダマスクと丸花模様のかごバッグの底
ダマスクと丸花模様のかごバッグの底

〝流行りの柄〟を定義すると、こんな感じでしょうか。

  • レベル1の重ねひもは垂直方向に通す、ただし単位の2点中1点は省略
  • 水平方向に3つの領域に分け、各、ダマスク・丸花・ダマスク模様にする

この組み合わせを、コード【①②③④-ab-あいうえ】で確認してみると次のようになります。

上部と下部

左図・ダマスク模様「BAAA-BA-ABBA」のうち【a】(レベル1の1本目)に相当する「B」を省略して、中央図の図柄にする。(省略することで、コード的には右図「BAAA-AA-ABBA」であるとも言えます。)

中央部

丸花模様の代表コードは「BAAA-BA-AB」ですが、【①②】部分の色と並びをダマスク模様に合わせた、色反転同一コード「BABB-BA-ABBA」を使います。
「左図・丸花模様「BABB-BA-ABBA」のうち【a】(レベル1の1本目)に相当する「B」を省略して、中央図の図柄にする。(省略することで、コード的には右図「BABB-AA-ABBA」であるとも言えます。)

模様の接続

上部と下部、中央部、ともに対応するコードを比べると【③④】部分の2点以外は、一致しています。中央図に赤の角丸四角で示した箇所です。

レベル1の重ねひもが垂直、つまり90度回転させるわけですから、【③④】部分はベースの水平ひもに相当します。

結果、全体の構成としては、青と黄で表現すると、

  • ベースの垂直ひもは青と黄の交互(【①②】)
  • 水平の編みひも(【③④】)は、下から、青3段→黄7段→青3段
    (青色部分はダマスク模様、黄色部分は丸花模様になります)
  • 後差しの重ねひも(【[a]b】)は、青のひもにのみ、1/2幅の青を重ねる
  • 後差しの斜めひも(【あいうえ】)は、青と黄の交互(黄・青順)

編みひもの段数(3-7-3)は固定ではなく任意に変えられます。2領域構成もあり。

模様の系譜

上に示したように、レベル1の重ねひもが省略されていますから、各、X模様・大花模様とも言えるわけですが、なぜダマスク模様と丸花模様なのでしょうか。それは、模様の歴史的な経緯があるからです。

2025年ごろからの作品に「ダマスク模様」と「丸花模様」の組合せが見られます。ちなみに、接続可能な類似コードを持つ模様は、他にも、花・松皮菱・連花・鍔(つば)・糸巻・バックル・手裏剣、など多数あるのですが、その中から、組み合わせの美しさが見いだされたということなのでしょう。

初期の頃は、レベル1の重ねひもは、普通に横方向でした。そのため、リボンと大花模様のかごバッグのように、垂直方向に区切られた領域に「ダマスク模様」と「丸花模様」が配置されていました。

次に、レベル1の重ねひもを垂直方向にすることで、「ダマスク模様」と「丸花模様」が水平方向の領域に配置されるようになりました。レベル1の重ねひものうち1本を除くことで、八角形風のタイリングになったのもこの頃でしょうか。

更に、領域を三分割し、三層の柄としての組合せがほぼ確立されたのが、2026年の初め頃ではないかと思われます。春ごろから少しずつ広まって、持つ人・作る人が増え、そして今(2026年9月)では、すっかり定番の「あの模様」になったようです。

並立ではなく変遷というのが面白いです。複雑そうに見えますが、分解して構成を見るとシンプルでロバスト性も高い、つまり意外と編みやすいからでもあるのでしょう。


この作品では、定義から若干変えて、レベル1の重ねひもを復活させてみました。中央部の7段だけ、レベル2のクロスひもを、レベル1の重ねひもの上に置いています。

本数・サイズ・色・バンドの並びなど、詳細は以下の構造データ(square形式)をご覧ください。

ブロック花模様のかごバッグ―種明かしと設計変更

フォローアップです。

先に「ブロック花模様のかごバッグ」の試作記事を載せた際、「作る時にちょっとしたミスがあった」と書きました。推察してください、とも。その種明かしです。

周りの方に聞いてみたところ

「どこかに通し忘れ箇所があるんじゃないの?」

確かに、あるあるですね。

まあでも、後差しのミスなら、最悪その1本を外して差し直せば修正できます。自分で気が付けば直しますし、指摘されてからでも、たいてい何とかなります。

AIにも聞いてみました。

「位相ずれ、特にLv.2の2色交互の色替え位置ずれの可能性が高い」

と、専門用語で指摘してきました。

説明を聞くと、今回のような2色交互の組み合わせは、多少の位置ずれがあっても模様として破綻しにくい、つまり「ロバスト性が高い」ということらしいです。

なるほど、それもありがちですね。ただ、私の場合、これはない。

というのは、これまでずっと、いろいろな模様を作ってきていますから。経験上、斜め方向の最初の差し位置だけは、編み図と首っ引きで確認しているからです。

では、何をミスったのか。

答えは、底編みの上下、つまりover / under です。これも、編んでいる方には「あるある」じゃないでしょうか。

立ち上げの段階になって、

「あれ、予定図と違う😓、、、逆じゃーん😭」

同色なら1本ずらせばいいけど、ブロックじゃ無理。じゃあ編みなおすか?ってところで、設計図の方を現物に合わせることにしたわけです。

まだ未公開のデータですし、over / under は、[ひも上下]で各面を[上下交換]すれば簡単に入れ替えられます。ただ、それだけでは済まず、それに合わせてLv.2ひもの位置を偶数ベースから奇数ベースに変えたり、花の位置を調整したりはしましたけどね。

実のところ、最初の設計はこんなでした。先と比べてどうでしょうか。

ブロック花模様のかごの最初の設計
ブロック花模様のかごの最初の設計

そしてもうひとつ、データの方を変えた理由があります。今は、ステッチの「応用ステージ」だということです。

『ステッチパターン図鑑』に載せたような、単位パーツを作っている段階では、over / under は厳密に合わせていました。全記事に定型文をつけて。でも、パーツを組み合わせて作品全体をデザインする段階では、over / under も、固定された条件ではなく、オプションのひとつになります。そんな例にもなるしな、と考えたのです。


今まで、サイトに試作例を載せるときには、

「これがデータです。この通りに作りました」

のような形で記事を書いてきました。でも実は、作りながら途中でデータを書き換えていた、ということもあるのです。

本のレシピ通りに作るのであれば、「逆じゃーん😭」は悲劇です。
でも、ソフトで設計しているなら、現物に合わせてデータの方を変更してしまえばいい。

作り直すより、その方が早いこともありますし、変更したデータからもう一度計算して図を出せば、以降は、ちゃんと辻褄も合います。

最初の設計に、最後まで縛られなくていい。
作りながら変えられる、というのもソフトを使うメリットです。

比較用に、元データをつけておきます。

PPバンド・リボンと大花模様のかごバッグ

『ステッチパターン図鑑』39ページに掲載されている「リボン模様」から、カラーバリエーション「ワイン・グログラン」を、手持ちの色で再現してみました。側面は9ページの「大花模様」のカラーバリエーション「深紅のオーキッド」です。

リボンと大花模様のかごバッグ

小さめサイズです。ワイン色のバンドの残りが少なかったので、作れるサイズにしたのですが、出来上がった最初の感想は、子供色にするんだった…でした。

垂直方向のバンドを切り替えていますので、前側面・背側面はストライプ、左側面・右側面はギンガムチェックです。

リボンと大花模様のかごバッグの側面
リボンと大花模様のかごバッグの側面
リボンと大花模様のかごバッグの内側
リボンと大花模様のかごバッグの内側
リボンと大花模様のかごバッグの底
リボンと大花模様のかごバッグの底

先には水平ラインで上部/下部に切り替えてみましたが、今回は垂直ラインで切り替えています。面ごとである必要はなく、面の途中での切り替えも可能なのですが、小ぶりで面自体が小さいため、面に合わせた方が自然でした。

図鑑のカラーバリエーションのQRコード/simulator ボタンからシミュレーターを開くと、それぞれ、次のような画面が開きます。

シミュレーターの使用コード
シミュレーターの使用コード

模様のコードを比較すると、異なるのは赤丸で示した1点だけで、垂直方向のベースのバンドに相当します。垂直ですから、底編みの段階で、どの領域をどちらの模様にするか、決めておく必要があります。

でも、それさえ合わせてしまえば他は全て同じですから、水平時のような段の切り替えは考えなくて済む、とも言えましょう。

この作品の構造データ(square形式)です。上の製作写真は、内側の縁ひもをグレーにしましたが、これはバンドの残りがなかったためで、普通にはワイン色です。メモ欄をご覧ください。

PPバンド・湖畔のカルガモ模様のかごバッグ

『ステッチパターン図鑑』からもう1点、36ページに掲載されている「アヒル模様」です。カラーバリエーション「湖畔のカルガモ」を、手持ちの色で再現してみました。

湖畔のカルガモ模様のかごバッグ
spot-billed duck
湖畔のカルガモ模様のかごバッグ

ベースはストライプです。内側は水平方向、外側は縦方向。

斜めのクロスひもは、45度と135度、方向ごとに色が異なります。先に作った時には1本ごとカットしましたが、今回は、底・縁の各1本を使って連続的に通しました。

湖畔のカルガモ模様のかごバッグの内側
湖畔のカルガモ模様のかごバッグの内側
湖畔のカルガモ模様のかごバッグの外側
湖畔のカルガモ模様のかごバッグの外側

図鑑のカラーバリエーションのQRコード/simulator ボタンからシミュレーターを開くと、下図・左のような画面が開きます。

赤丸で示した2文字は、水平方向に重ねる差しひもに対応するのですが、この2点をともにAからBに変えると、右図、反転・反対方向を向いたアヒル模様になります。ベースや斜め方向のバンドは同じで、変えるのは1/2幅の重ねひもだけ。

ということで、側面を部分的に変えてみたのです。行って帰ってまた行って、カルガモ親子のお引越しの行列です。

使用したコード
BAAB-AA-BBAA
BAAB-BB-BBAA
シミュレーターの使用コード

この作品の構造データ(square形式)です。本数・サイズ・色・バンドの並びなどは以下のXMLをご利用ください。